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Don't Feed Wild Animals !

アッー!ホッキョクグマ!


札幌ドームです。

なんと、ここにもホッキョクグマの双子が!
という感じで、いつもの動物サイトらしく、ホッキョクグマの話にでも持っていくつもりだった。
僕がドームに着いて最初に双眼鏡でまず見たのが、このホッキョクグマの双子をキャラクターにしたトドックの看板だった。これをネタに今晩どう話を膨らませるか考えなきゃならん、と一瞬考えたそのすぐ後だった。僕はトドックの上によく知った顔を見つけて驚いてしまい、そんな考えはどうでもよくなってしまった。
それは職場の同期のNだった。ずいぶん上等な席で観戦していやがる。僕は双眼鏡で観察しながらNの携帯を鳴らしたが、一度は迷惑そうに無視されてしまった。しつこくかけ直すと、Nはやれやれという感じで仕方なく自分の携帯を手にし、そして電話の主が僕であることに驚いた顔をした。
内野席の前方に座っていた僕の位置をなんとか確認してもらい、僕とNは大きく手を振りながら挨拶をかわした。

僕とNを結んだ数百メートルの直線の中点あたりには、多田野がいた。多田野は、今季の多田野にしては考えられないような快投を続けていた。どうして今、多田野に奇跡が起きているのだろう。僕はある因縁を感じていた。僕とNの共通点は、オハイオ州クリーブランドで働いていたことである。ともにクリーブランドには人並みならぬ思い入れがある。そして多田野が初めてプロ契約をかわした球団は、クリーブランド・インディアンズだった。多田野もクリーブランドに思い入れがあるに間違いない。今日の多田野は、僕とNのクリーブランド・パワーで輝いているに違いないのだ。

僕はもうファイターズの誰が打とうがどうでもよかった。今日の多田野はノーヒットノーランという奇跡を起こすに違いないという確信が湧いていた。7回にファイターズが2点を追加したときも、ドームの興奮をよそに僕は余計なことをしてくれたと思っていた。急に攻撃の時間が長くなると投手はリズムを崩しやすいし、リードが広がったことで緊張感が途切れる。案の定、8回の多田野は立て続けにファーボールを出した。たまらず吉井コーチが出てきたときは、これはノーヒットノーランはおろか、逆転もあり得るとさえ思った。普通ならここで絶対打たれる。だが多田野はギリギリで踏ん張った。間違いない。明らかに僕とNのクリーブランド・パワーが多田野に通じている。

結局、多田野は9回ツーアウトで迎えた最後のバッターになるはずだった打者にヒットを打たれた。ドームには緊張の糸が切れたようなため息が流れた。僕の、僕しか楽しくない妄想話もここで終わりである。

多田野はノーヒットノーランをあと一人で逃したことを少しも悔やんでいなかった。ヒット性の当たりもアウトにしてくれる野手のおかげだと言った。僕は多田野は正直な気持ちを話しているんだと思った。こうして日本で喝采を浴びながら投げることができる日がきたことを幸せに感じているに違いないのだ。もうTDNじゃない。
試合後、Nは多田野とハイタッチしていた。ふん、くやしくなんかないぞ。僕は野球になんか興味ない。そのうちホッキョクグマとハイタッチしてやるさ。