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「カハハン、カハハン」鳥の鳴き声の擬音表現

日本野鳥の会の「フィールドガイド日本の野鳥」を見ますと、「カハハン、カハハンと、よく透る声でなく」としっかり書かれていました。「通る」と「透る」の違いこそあれ、前記事の記述はこれが元になっている可能性が大です。なんといっても本書は故・高野伸二大先生の書かれた鳥ヲタのバイブルみたいな本ですから、そうなると逆らうわけにはいきません。マガンは「カハハン、カハハン」と鳴きます。決定。

フィールドガイド 日本の野鳥

フィールドガイド 日本の野鳥

話が微妙にそれますが、それであらためて本書における鳴き声の擬音表現を見てみますと、そのセンスは注目に値するものがあります。たとえば、スズメは「チュン、チュン」ということで、本当にそう鳴いているかどうかは別として、大方の人は「チュン、チュン」で自分の聞き覚えのあるスズメの本当の鳴き声を思い浮かべることができるんじゃないでしょうか。ところが本書では、

チュン、チップ、ジュジュジュ等と鳴く

と書いています。最初の「チュン」で、やっぱそうだよねと安心し、「ジュジュジュ」は地鳴きのことだなと理解できるのですが、「チップ」には新鮮な驚きを隠しきれません。しかも、高野先生は「等と鳴く」と書かれているのです。「等」です。おそらく、もっと様々なスズメの鳴き声、たとえば「チェッ!」とか「チッチッチ」「チュッ☆」「チッチキチー」など、数え切れないほどの鳴き声、いや話し声を記載したかったのではないか。先生は本当はスズメと会話ができるほどであり、夕方のスズメミーティングにも参加されていたのではないか。でも紙面の都合上泣く泣く「等」で省略せざるをえなかったのではないか。私の妄想推論は止まりません。
昔、私は滞米中にアパートのベランダに餌台を出したことがありました。最初はスズメばかりが集まりましたが、その後カラ類が、そして最後にはカージナルまでもがやってきて、心躍る気持ちだったのですが、餌やりにいろいろと疑問が湧き、結局餌台を片付けることにしました。翌朝、私はスズメたちの大声で目を覚ましました。翌日もやっぱりスズメたちは餌を目当てにベランダにやってきたのです。あのとき、私には「チュン、チュン」というスズメたちの鳴き声が、確かに「無いっ!無いっ!」に聞こえました。今でもはっきりと思い出すことができます。それどころか、その後やつらは「おい、まだかよ」「出し忘れてるんじゃないか」「お願いします、出してください」「すいませーん、いつものやつお願いします」「なんで今日は出さないんだ馬鹿野郎!」などと喋ったのです。ええ、間違いありません、はっきりと思い出せます。
さて、カラスは「カーカー」あるいは「カァーカァー」でみなさん異論ないと思いますけど、これはハシブトガラスの声だと思いますので、ハシブトガラスの項目を見てみます。するとやはり

澄んだカァー、カァーという声で鳴く

と書かれていて安心します。ところが我らが大先生はやはり違うのです。これだけでは済みません。「ほかに」とつなげて我慢できないという感じで付け足していきます。

ほかにアーアーアーアーという高低を変えた声、アハハハという笑うような声、争うときにはガラララという濁った声を出す

身近なハシブトガラスだってしっかり観察すればこれだけ楽しめるんです。なんだか感動してきました。ちなみに最近街中で勢力を伸ばしつつあるハシボソガラスは、同じカラスでも鳴き声がちょっと違うので、機会がありましたらぜひ意識して聞いていただきたいと思います。ハシボソガラスはこうです。

カララカララという濁った声で鳴く。カポンカポンと鳴くこともある。

一般にハシブトが「カァーカァー」ならハシボソは「ガァーガァー」ですが、さすが鳥ヲタのバイブルなので、この本はちょっとレベルが高いようです。濁った声だから濁音で表現しようというのは素人の浅はかさなのですね。「カポンカポン」に至っては、私もまだまだ勉強が必要だと痛感しました。

追記:いやー、この本マジおもしれー。まだ読んでるよ。カンムリワシはなんて鳴くか知ってるー?

繁殖期には飛びながらフィッフィッフィーとかホィョーと鳴く

ホィョーは小さいィと小さいョが続きます。どうやって発音すれば……。