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Don't Feed Wild Animals !

7年ぶりの宮島沼

宮島沼のレポートを楽しみにしてますと言われたので、書かざるをえないかなと思って書きます。やっぱ宮島沼のマガンといったら夜明けの一斉飛び出しを見ないわけにはいかないので、夜明け前の到着を予定しました。ところがなんせ7年ぶりですから、いきなり真っ暗な夜道を迷わないで行く自信がありません。そこで前日の午後に下見に行きました。札幌からだと道央道を使って三笠インターから行くのが早いと思います。日中だと1時間半、夜中だと1時間ちょっとというところでしょう。
というわけで、当日は午前2時半に起床し、3時前には出発しました。鳥見人は早起きが原則です。2時半だよーっと起こされました。朝が苦手な私にとって鳥見を趣味にしたことに後悔を感じる瞬間です。現地到着は午前4時前。ヘッドライトを沼方向へ向けないように注意しながら駐車場に車を停めなさいとのことです。トランクを開けて真冬用の完全防寒着、長靴、三脚やカメラ、スコープなどをゆっくりと準備します。そしてマガンたちのざわめきを聞きながら、彼らを驚かせないようにゆっくりと沼に近づき……という言いつけを……。と、ところが何だろうこの人出は! 7年前とは大違い。次から次へとやってくる車、車、車。場所取りに焦り急ぎ足の人、人、人。宮島沼はちょっといない間にこんなにも有名になってしまったのね。

なんか久しぶりなのですっかりよそ者気分。遠慮がちに観察小屋方面の岸に陣取りました。小さな沼は約6万羽のマガンで埋め尽くされています。

観察小屋方面が一番人気(にんき)ないだろうと思って来たんですが、もうこんなに人が集まっています。

その西側には最も人気のある、いわゆる突堤があります。

狭い突堤はすでに大人数で埋まっています。あふれて沼に落ちる人が出るんじゃないかと心配になってきます。

宮島沼日記で問題となっていた西側ですが、写真愛好家たちはやはりこちらに集まります。なぜかというと、朝日とマガンを一緒に撮りたいからなんですね。さすがに当日は人目が多かったせいか、保護区に侵入する人は見当たりませんでした。

で、ぼちぼちと東の空が白くなってきて、マガンたちのざわめきも大きくなりだします。見物客はごくりと唾をのみ込んで、沈黙を守っています。

残念なのかどうか微妙なところですが、今のマガンたちは全部が一斉に飛び立つということをしません。いつの間にか何グループかに分けて飛び立つようになりました。一説によると数が増えて飛び立つときにぶつかって怪我をする危険が出てきたからだそうです。この日も気の早いグループがパラパラと先に飛び立ちました。

それでも最後のグループは最も数が多く、まるで球場の大観衆がウェーブを描くかのように、次々と飛び出していく様はやはり一見の価値があります。

明るくなってきた空はマガンの大群で覆いつくされます。

もうマガンだらけです。羽ばたきの音が耳の近くで鳴っています。

あっという間の飛び出しが終わると、沼にはマガンが全然いません。

もう、あれは幻だったのだろうか、と思えるほど何もいなくなります。

夜明けの飛び出しはやはり何もせずに肉眼で楽しむ方がいいです。カメラなんか操作しているうちにあっという間に終わっちゃうし、どうせ暗くてこんなふうにろくな写真撮れません。もしも撮るなら、やはり写真愛好家たちのように西側に回って朝日をバックに撮るのが芸術的なんでしょうけど、私にはあそこに車を停める勇気はありません。

沼にはもうマガンはいません。マガンは沼の周囲の田畑にいます。昔はけっこう遠くまで探さないといなかったものですが、今は沼のすぐ近くにもいるので驚きました。近隣農家の方々との協力など、いろいろな努力が実っているのでしょう。
沼にマガンはいなくても、宮島沼周辺にはいろんな鳥がいます。前回書きましたけど、この日はオオジュリンや、真っ黒になったノビオや美人のノビコ(ノビタキのオスとメス)、アリスイなどたくさんの鳥を楽しむことができました。

あいかわらず美人のノビコ(ノビタキのメス)。

これでもキツツキの仲間のアリスイ。アリを吸うんだぜとか、気持ち悪いとか、首を180度回転して後ろを見るんだよ不吉だよとか、悪口ばかり言われているアリスイですが、私は初見だったので興奮して見入っていました。そんなことないよ、なかなかかわいいよと思いました。少なくてもオオバンよりは間違いなくかわいいよ。

で、10時ぐらいになると、朝飯食ってちょっと休憩に帰ってくるマガンたちが現れます。もうすっかり明るいですから、もしマガンの写真を撮りたいならこのときにゆっくり撮ればいいんです。

それで近くにオジロワシでもいてちょっかいでも出してくれれば、慌てたマガンが一斉に飛び立ちますから、飛翔写真も撮ることができます。だから写真愛好家たちは不謹慎かなと思いつつも、ついついオジロワシに期待しちゃったりします。

この時期の樺戸連山はまだ雪景色ですから、それをバックにがんばればいい写真が撮れるはずです。私は全くがんばる気がありませんでしたけど。
ところで、マガンの群れとか飛翔とか、いい写真撮るぞとか、そんなことばかりに気をとられていると損をします。マガンの群れの中に他の珍しいガンの仲間が混じっているかもしれないので、それをよく観察しなければなりません。オジロワシに期待している場合ではないのです。

ほら!いました!これはマガンじゃありませんよ。カリガネです。

分かりやすいようにマガンとのツーショットです。ひとまわり小さく、くちばしがピンク色で短くて、顔が前後につぶれたような印象で、鼻の白い部分が大きく、黄色いアイリングが目立つといったところがマガンとの違いです。最近は黄色いアイリングを持つマガンもいるので紛らわしいのですけど、こいつは間違いなくカリガネです。やったー! あと、オジロワシに飛ばされちゃって写真には撮れませんでしたが、翼だけが真っ白のマガンが一羽いました。ハクガンとの交雑か、あるいは部分白化だと思われます。昔はここでハクガンや、マガンとシジュウカラガンの交雑などを見たことがあります。

いいかげん腹も減ってきたところで、昼食は、むつみ屋です。今でこそ世界的なチェーン店ですが、何を隠そうここが正真正銘の総本店です。昔はここまで有名になるとは思いませんでした。

むつみ屋といえば、北海道独特の魚だしを使った醤油ラーメンなんですが、赤味噌白味噌に続く新作の黒味噌というのが気になって、それを頼んでしまいました。

うーん、やっぱり醤油を頼んで昔を懐かしむべきだった。ドンブリのすりきれて消えそうなむつみ屋の文字が総本店の歴史の重みを感じさせます。

ところで、むつみ屋の中で見つけたのがシジュウカラガン、ではなくて、胸が白いのでカナダガンですね、温度計です。別に宮島沼とは関係ありませんが。

それで思い出したのが、前述のマガンとシジュウカラガンの交雑です。7年前の懐かしい写真をあげておきます。さすがにこの一家はもうすべて死んでしまったようです。
むつみ屋のあとは月形温泉で日帰り入浴です。宮島沼で会った人がむつみ屋にも月形温泉にもいるのでおかしくなってきます。そして、夕方にまた宮島沼に戻れば、沼を去っていたマガンたちがほとんど一斉に四方八方から戻ってくる壮大な光景を目にすることができます。私は温泉で力尽きました。ごめんなさい。