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「赤ワインの認知症予防効果」メカニズムを解明

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100929-OYT1T00133.htm

赤ワインに含まれる植物成分のポリフェノールが学習機能や記憶をつかさどる脳の海馬を活性化するメカニズムを突き止めた。(中略)認知症の予防や改善につながる研究結果で、近く研究論文が米化学誌に掲載される。O教授らのグループはマウスの知覚神経を培養、ポリフェノールを加える実験をしたところ、脳の海馬を刺激する物質「CGRP」の放出量が増加することが分かった。

ぼくはこの研究内容に興味はないんだけど、昔から疑問に思っているのは、こういう研究結果が、どういう経緯で新聞に取り上げられるんだろうってことです。実験して結果が出て査読のある雑誌に論文が発表されて、それはそれで立派な仕事ですが、そういう論文っていうのは毎年毎年星の数ほど出るわけで、新聞記者はそこんところ、どのような基準で記事にするしないを決めてるのかっちゅうことです。そこらへんしっかりしてくれないといけません。

科学雑誌は査読の厳しいものからほとんどパスなものまで、がんがん引用される有名雑誌からぜんぜん相手にされない雑誌まで、それこそピンキリなわけです。でも重要な論文というものは、他の研究者に注目されて引用が引用を呼ぶし、そうして関連する研究結果がどんどん出てきて、何となく全体としてコンセンサスのようなものができあがっていくわけです。ひとつの論文がちょこっといい雑誌に載ったからって、はいこれで科学的に決定!ってわけではありません。一般の人はそんなことは知らないわけで、新聞に載ったか載らないかでその研究の価値を判断してしまうわけです。だから、新聞記者はすごく責任重大なんだぞと、そこんとこよく分かってくれないといけないんです。

たとえば日本人がネイチャーやサイエンスに載ったらさすがにすごいことだから記事にしてもいいかもしれません。でもだからといってその結果が真実とは限りませんよ。ネイチャーに載った翌日に、もう否定されてるってことだってあるんですから。気をつけたいのは米科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)です。あれは会員なら比較的簡単に載せることのできる速報性を重視した雑誌であり、玉石混交です。新聞記者はそういう雑誌の性質も把握した上で、慎重に取材して欲しいものです。

というわけで、ぼくは昔はこのO先生の論文をよく読みましたが、最近はナンチャラ水の効果とか、ちょっとトンデモな方面にも手を出しているようで、なんでそうなっちゃうのかなーってがっかりしていたところです。この記事にも「メカニズムを解明!」なんてセンセーショナルな見出しがついていますけど、論文そのものを読んでないので何ともいえないところですが、まずひとつは、なんだマウスの実験かよって思ったのと、それから、結局O先生は昔からお得意のCGRPに行き着いちゃうのね、って思っちゃいました。