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コウノトリの郷の楽しみ方

今年は放鳥コウノトリ5組が野外で営巣し、生まれたヒナの一部はすでに巣立ちし、残りのヒナたちもまもなく巣立ちを迎えるようです。鳥ブロガーとしては、皆さんにもぜひコウノトリの郷を訪れて、放鳥事業のことを知って欲しいと思う反面、むやみな宣伝をして巣塔に登ってイェ−する人が出るのも心配ですので、僭越ながらその見所のみならず、心構えや注意点などにも鋭く突っ込みたいと思います。

コウノトリの郷の楽しみ方(初級編)


コウノトリの郷公園に着いたら、さっそく本物のコウノトリがお出迎えしてくれます。間違っても封筒やハガキを与えるようなことは慎んでください。

コウノトリの郷公園に着いたら、初心者は迷わずコウノピアに入りましょう。初心者はここを見るだけで充分です。

さっそくコウノトリが営巣しています。この巣ではどうやら3羽のヒナがかえったようです。営巣中の親子は非常に神経質になっているので、刺激を与えないよう静かに遠巻きに見てください。

こちらの巣では2羽のヒナがずいぶん大きくなっています。もう巣立ちの練習をしてもいい頃かと思うのですが、やはり無神経な観光客のせいでしょうか、微動だにしません。

コウノトリの郷といえども、大空を舞う姿を拝めるのはなかなか難しいのですが、幸運にもこの日は至近距離でその姿を見ることができました。よほど楽しいのか、笑っているようにも見えます。

意外に館内は危険でした。ツキノワグマと鉢合わせです! しかし、こちらは北海道でのヒグマとの格闘で鍛えた身体です。案の定、ツキノワグマはこちらの気合と迫力に恐れをなして微塵も動けませんでした。

フィールドでは最大限の観察力と注意力を発揮しなければいけません。意外なところにコウノトリのつがいが潜んでいますから、油断は禁物ですよ。

そろそろお腹も減ってきたころだと思います。さっそくコウノトリをいただきましょう。

そろそろくだらない冗談はやめろとお怒りのことと思います。機嫌を直して公開ケージに出てみましょう。ここで本物のコウノトリに出会えます。

「わあ、2羽のコウノトリが仲良く羽を広げている!」初心者はこの程度の勘違いをしたまま、満足してお帰りになってください。

コウノトリの郷の楽しみ方(中級編)

何が勘違いなのか知りたくなった方はもう初心者ではありません。次のステップに進みましょう。

公開ケージは充分に時間をかけて観察してください。そのうち係りのおじさんによる子どもたちへの解説が始まりますので耳を傾けましょう。子どもたちがいなくても、定期的に係りのおねえさんがマイクで解説してくれますので大丈夫です。

公開ケージには現在12羽のコウノトリが飼育されています。ですから、鳥を数えて12羽以上になっちゃった人はコウノトリ以外もカウントしていることになります。この写真では一番右端がアオサギです。一度覚えれば簡単ですよね。ここにはコウノトリのエサを狙ったアオサギが大挙して来ていますから、間違えないでくださいね。

公開ケージの中の飼育コウノトリは、ケージの外に出られないように羽が一部切られています。だいたいこの写真のように、右羽の大部分と、左も一部切られていることが多いようです。羽は髪の毛のようにまた生えてきますから、もし放鳥されることになっても大丈夫です。

公開ケージでは1日1回だけ午後3時にエサの魚が与えられます。ですからできればこの時間帯に観察することをオススメします。もちろん一番混む時間でもありますが。

そうしてゆっくりと、コウノトリとアオサギの魚争奪戦を楽しむことにしましょう。

コウノトリの郷の楽しみ方(上級編)

ここから先は本当に鳥好きの方のレベルになります。しかし鳥が好きかどうかに関わらず、「何かに凝る」性分の方には結構面白い話になるかもしれません。
さて、郷公園では公開ケージばかり見つめていないで、周りにもしっかりと注意を払いましょう。たとえば郷公園から肉眼でもよく見える巣塔があります。

あ、コウノトリがいますよね。となりのおじさんに、足環があるかどうか聞かれました。

拡大写真です。左足に「黒緑緑」の足環をしていますよね。そうするとそのおじさんは、「なんだ、399か。」とつぶやきました。そしておじさんが手にしていた紙を見せてもらい、私は愕然としたんです。

これの元はココになります。2007年の放鳥コウノトリの足環による鑑別が良く分かります。たしかにあいつは「J0399」という名前、名前というか番号がつけられており、2007年に段階放鳥されたメスだということが分かります。
どうしてそこにいるかというと、放鳥されて自由の身ではあるが、午後3時がエサの時間だというのは覚えていて、いまだにその時間になると公開ケージにメシ食いにやってくるんですね。実はこの日はそんな放鳥コウノトリが「J0399」も含めて3羽いました。

その3羽が公開ケージの中に入りました。背中から発信機のアンテナが出ていたり、羽に色模様がつけられていたりします。

これの元はココになります。「J0399」は羽にも青と赤の印がつけられていたんですね。

これも元はココになります。2006年に巣立ちした「J001」もいました。足環が「黒黒黄」です。ちなみに「J001」といえば、現在増殖センターの屋根で「J0302」というメスと家庭を持ちヒナも孵っているのですが、「お父さんになるには若すぎる」ということから本当の父親ではないんじゃないかという疑惑が持ち上がっています。とすると「J0302」を妊娠させた超本人は誰なんだ!この遊びコウノトリめ!それに引き換え「J001」のなんと男らしいことよ。「そんなこと関係ないよ!君が生んだんだから僕の子どもさ!」ほら、目の前にいたのはただのコウノトリなのに、事前に情報を仕入れていれば、突然人生ドラマが広がりますよね。

ということで、公開ケージに入ってきた3羽の放鳥コウノトリは、向かって左が「J001」オス、真ん中が巣塔で待機していた「J0399」メス、そして右が「J0405」オスだということが分かります。「J001」は2006年5月16日生まれで段階放鳥からふ化して巣立ったオス、「J0405」は2006年4月16日生まれで自然放鳥されたオス、同い年ですけど育った環境が違います。そんなことが分かればセリフも入れやすくなりますよね。

男らしく豪快に魚を捕らえる「J0405」、そんなことも雌雄を知っているから書けます。

女の子らしくちょっと控えめで上品に魚を捕らえる「J0399」、そんなことも雌雄を知っているから書けます。ですから、上級者の道を目指す方は、是非とも兵庫県立コウノトリの郷公園のウェブサイトをくまなく漁り、あらかじめ放鳥コウノトリの鑑別をされておかれると楽しみも倍増かと思われます。

ところで、公開ケージの近くのちょっと小高い丘に登ると、コウノピアの屋根が見えます。よく見ると、そこにも一羽のコウノトリが…。

このコウノトリにはなんと足環がありません。そう、彼女はまさに野生のコウノトリなんですね。前述のおじさんが、足環がついてると言うとちょっとがっかりしていたのは、実はこの野生のコウノトリが目当てだったからなんです。彼女はこのサイトでもニュースとして取り上げていると思いますが、最初愛媛で目撃され、その後愛媛と豊岡を行ったり来たりして、結局最近は豊岡に居ついています。地元では通称「エヒメ」と呼ばれているようです。エヒメの写真はこちらにアップしましたのでご覧ください。
KayaSumi PhotoLog | 野生のコウノトリ 「エヒメ」

コウノトリの郷の楽しみ方(超上級編)

さて、さらに上のレベルを目指す方はこの辺で郷公園を後にしましょう。

この元は兵庫県立コウノトリの郷公園:いき物通信のPDFから抜粋したものです(http://www.stork.u-hyogo.ac.jp/tsushin/tsushin_pdf/20080505b.pdf)。このように豊岡市内にはかなり広い範囲に渡って人工巣塔が設置されています。今年はそのうち4つの巣塔と、増殖センターの屋根、合計5ヶ所で放鳥コウノトリのカップルが営巣しました。あらかじめそういう情報を仕入れた上で本物の巣を見に行きましょう。

その中のとある巣塔を訪れました。かなり遠くからなのと天候不順により映像はやや不鮮明です。ヒナは3羽確認できました。

お母さん「J0294」が巣材を運んでいるところです。

お母さんが巣に戻りました。

ヒナはもうだいぶ大きいです。しきりに飛ぶポーズをして巣立ちの練習に入っています。

もちろん必要以上に近寄るのはやめましょう。これが普通の野鳥だったら営巣写真を出しただけで袋叩きにあうぐらいなのです。あるオバサンがカメラを持ってこの看板を突破しようとしていたのを、スコープで観察していた若者が咎めました。「だって短いレンズしか持ってこなかったから」と言い訳をするオバサンに「そういう問題じゃないでしょ」と毅然と対峙した彼は素晴らしかった。「だって短いレンズしか持ってこなかったから」ってオバサンが言ったとき、ああ、私が離れているのは別にコウノトリに配慮しているわけでも何でもなく、単に私のレンズが長いからなのだろうかと、一瞬自己嫌悪に陥りました。
この巣塔のライブ映像がなんと以下のサイトから拝めます。本日現在、まだ巣立ってはいないようです。
城崎温泉観光協会ホームページ

その後、同じ長玉で撮影していた地元の方が、私のナンバープレートを見て遠くから来たことを知り、あちこちの営巣場所を教えてくれました。とある営巣場所の近くでは田んぼで普通に餌取りをしている親に何度か出会いました。
コウノトリの郷公園関係者のみならず、コウノトリが住める田んぼづくりを進める農家の方々、そしてコウノトリをとりまく熱きファンたち、地元のみんなが一致団結して野生化事業に情熱を注いでいることを肌身で感じました。
特に、見知らぬ私たちに親切にしてくれたりコウノトリのことを熱く語ってくれたりした豊岡と姫路の愛鳥家の皆さんには熱く御礼申し上げます。10年後にまた訪れようと思います。ほんと10年後が楽しみです。