気圧のせいなのかもしれないが、飛行機に乗ったときの私は離陸して水平飛行に移ったあたりで気が遠くなり、車輪が地面について着陸するときのガタンという振動で目が覚めるのが常だ。そんな私にとってお飲み物サービスはこの世で最も要らない無駄なサービスなんである。あんなことで起こされてしまってはたまらないので、とにかくお飲み物の台車がやってくるまでにはスチュワーデスが声をかけるのをはばかるぐらい、またスチュワーデスの声ぐらいではびくともしないほどの熟睡状態でなければいけないのだ。ところが、ひとつ解決しがたい問題がある。シートの背もたれの角度調節だ。できれば背もたれを倒してより快適な環境で安眠をむさぼりたいのはやまやまなのだが、シートを倒すには離陸後安定飛行に入るまでしばらく待たなくてはならず、そんなことをしていたら熟睡に入る前にあの恐怖のドリンクサービスが来てしまうかもしれない。よしんば眠る前にうまくシートが倒せたとしても、着陸態勢に入るときにシートをお戻しくださいと起こされることになる。だからいつもシートの背もたれはそのまま触らずに過ごすことになるのだが、熟睡すればするほど、安眠できればできたほど、飛行機を降りた後に首が痛いのが悩みの種である。というわけで、ドリンクサービスなんていいからさ、こっそりシートの背もたれを倒してくれてまたこっそり元に戻しておいてくれるサービスを希望します。ドリンクサービスとのセレクトでもいいです。よろしく全日空。
