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Don't Feed Wild Animals !

ツバメの悲劇

今年は近所のツバメを探しますと宣言したはずでしたが、心身ともにコンディションが整わず、なかなか挑戦できないでいました。当たり前の話かもしれませんが、「家の近所」に関する情報量は主婦の方が圧倒的に多いはずです。そこで今日は買い物に出かけるカミさんの後ろをカメラ持参でてくてくとついて行くことにしました。

私の近所でもわりと大きくて交通量の多い道路です*1。カミさんによれば、道路の向こう側にある建物の中にツバメが飛び込むのを目撃し、駐車場の蛍光灯に巣を作っているところを発見したそうです。

確かに巣がありました。ところがツバメはすでにいないようです。ここでの産卵をやめたのか、あるいはふ化に失敗したのか、あるいはもうヒナが巣立ってしまったのか、真相は分かりません。

建物の主によって巣の下には新聞紙がひいてあったそうですが、今ではそれも横の方によけられていました。
気を取り直して、カミさんが4羽のヒナが孵っていることを確認しているという小学校に向かいました。

巣がありました。正面玄関の真上にある換気口を利用していました。ところがヒナは2羽しかいません。すでに巣立ったのでしょうか。遠くにエサを取りにいっているのか、親の姿も見えません。ですからヒナは口を真一文字に閉めて大人しくしています。

小学校としても気を遣っている様子が伺えます。巣の真下には「ツバメのトイレ」と書かれたダンボールがひかれていました。その「ツバメのトイレ」という文字はフンで見えにくくなっていましたが、まるでそのことが、親が苦労してここまで育てたということの軌跡を表しているように思えました。
ところが、その「ツバメのトイレ」の傍らに目をやったとき、思わぬ光景に愕然としてしまいました。

なんと残りの2羽は落下して死んでいたのです。1羽はうつ伏せで、そしてもう1羽は仰向けで。すでに硬直しているような印象を受けたので、死んでからけっこう時間が経っているのではないかと思いました。
カラスなどの外敵に襲われたのかもしれませんが、死体が残されていることから、なんらかの事故による転落死の可能性もあります。今はシーズン第一回目の巣立ちの時期でもあり、この子たちには早いところ独立してもらって、そろそろ二回目の子育てに向けて準備をしなければなりません。巣はいくぶん高い位置に作られており、コンクリートの床までは何の障害物もありません。つまりヒナが初飛行に失敗した場合、途中で止まる場所もないという、ヒナにとってはちょっと危険な場所にあります。ひょっとすると親が早すぎる巣立ちを促した結果の転落かもしれません。

今や残されたヒナの真一文字に閉めた口は、兄弟の分まで生きるぞという決意表明にも見えてきました。

私は普段、鳥のヒナが何者かに食われるニュースには「それが自然というものだ」というようなコメントをつけます。保護のつもりで家で飼ったり餌付けをすることを批判します。カルガモのヒナに「全員元気で育ってほしい」という言う人はどうかしていると思ってます。半分育てばいい方なのが生態というものです。つまり私は普段、自然や生態の肯定主義者を気取っているのです。

今年は近所のツバメを探すぞと意気込んで、やっと重い腰を上げましたが、そうして今シーズン初めて見たツバメのうち、半分は死体でした。つまりこれは、お前は普段、自然や生態の肯定主義者を気取っているが、果たしてそれは本当なのかと、何者かが私に問うているように思えてならないのです。

*1:現地では通称金石(かないわ)街道と呼ばれています